少額訴訟とは、簡易裁判所で行われる、通常の民事訴訟よりも手続きを簡易化・迅速化した60万円以下の金銭支払い請求
訴訟手続きをいいます。
少額訴訟手続を利用するためには、①訴額が60万円以下であること、②金銭の支払い請求であることのほか、③同一原告については年に10回までの利用回数の制限の範囲内であること、④事件の内容が複雑困難でないこと、⑤被告が少額訴訟に
反対しないことなどの条件があります。
①②訴額60万円以下の支払い請求訴訟であること
交通事故の示談金や慰謝料など、60万円以下の損害賠償請求については、少額訴訟の利用が可能です。
④事件の内容自体が複雑困難でないこと
交通事故の発生、事故態様、過失割合、慰謝料などの損害賠償額など争点が多数ある場合や複雑な争点がある場合、裁判所が職権で通常の民事訴訟に移行してしまう可能性があります。
少額訴訟では、証拠が即時に取り調べられる証拠に限られ、審理の回数も原則として最初の1回に限られているなど、争点に対する充実した審理よりも、効率のよい簡易迅速な審理という点が重視されており、多数または複雑な争点が
ある事件を少額訴訟の審理方式で行うことは相当といえないためです。
⑤被告が少額訴訟に反対しないこと
被告が、初めに行う口頭弁論の前に、被告が簡易裁判所での少額訴訟手続ではなく地方裁判所での通常訴訟手続への移行を
求めた場合、訴訟は通常訴訟手続に移行することとなります。このとき、原告は訴訟手続の移行について拒否する権利がありません。
以上のような利用条件を踏まえると、交通事故の示談・損害賠償で少額訴訟を活用するケースとしては、物損事故の損害賠償を請求するケースや被害者が軽傷な人身事故で損害賠償するケースが考えられます。
なお、少額訴訟で、請求内容が認められて判決が言い渡される場合、最大3年間の支払い猶予や分割払いが命じられる可能性があります。