後遺障害による逸失利益とは、交通事故によって後遺障害を負い、その後遺障害のために行動範囲が制限されるなど、本来の労働能力を喪失したことについて、労働能力の喪失がなければ得られるはずだった利益のことをいいます。
後遺障害による逸失利益をいくら請求できるかは、次の計算式によって算定されます。
①基礎収入×②労働能力喪失率×③労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数
この計算式は、自賠責保険基準や弁護士基準など、どの基準を用いる場合も基本的には共通です。
①基礎収入
原則として、交通事故直前の現実の収入額で計算します。
たとえば、会社員・サラリーマンなどの給与所得者であれば交通事故前の年収(額面)、個人事業主であれば交通事故前年の確定申告所得額が基礎になります。家事従事者(専業主婦・パート)の場合、女性労働者の平均賃金を基礎収入額とすることが多いです。
②労働能力喪失率
労働能力喪失率は、基本的には、下表(1)の後遺障害等級に応じた喪失率を用いますが、事案によっては、後遺障害による被害者の労働・日常生活上の具体的な不利益の内容・程度を考慮して修正を加えることになります。
③労働能喪失期間とそれに対応するライプニッツ係数
労働能力喪失期間については、後遺障害の内容や程度、被害者の年齢などを考慮して算定されます。
むちうちなどの神経症状・自覚症状を主体とする後遺障害については、労働能力喪失期間の決定に困難が伴うことも少なくありません。後遺障害等級12級に該当する神経障害については概ね5年から10年程度、後遺障害等級14級に該当する神経障害では概ね5年以下となることが多いです。
令和2年4月1日以降に発生した交通事故の損害賠償請求に適用する場合の労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数は、下表(2)のとおりです。
(表1)労働能力喪失率
後遺障害等級 |
労働能力喪失率(%) |
1級 |
100 |
2級 |
100 |
3級 |
100 |
4級 |
92 |
5級 |
79 |
6級 |
67 |
7級 |
56 |
8級 |
45 |
9級 |
35 |
10級 |
27 |
11級 |
20 |
12級 |
14 |
13級 |
9 |
14級 |
5 |
(表2)労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
労働能力喪失期間(年) |
ライプニッツ係数 |
1 |
0.9709 |
2 |
1.9135 |
3 |
2.8286 |
4 |
3.7171 |
5 |
4.5797 |
6 |
5.4172 |
7 |
6.2303 |
8 |
7.0197 |
9 |
7.7861 |
10 |
8.5302 |
11 |
9.2526 |
12 |
9.9540 |
13 |
10.6350 |
14 |
11.2961 |
15 |
11.9379 |