交通事故に遭うと、足にケガをしてしまうことも多いです。足に後遺障害が残ると、歩くことも不自由になり、日常生活にも仕事にも大きな支障が発生するので、適切に後遺障害の等級認定を受けて、必要な保証を受ける必要があります。
足の後遺障害にはいろいろあるので、どういったケースでどのような後遺障害が認められるのか、押さえておきましょう。
以下では、交通事故の足の後遺障害について解説します。
足の後遺障害の種類
足の後遺障害には、下肢の後遺障害と足指の後遺障害があります。下肢の後遺障害とは、股関節から足首にかけての脚の部分が失われたり動かなくなったりした場合に認められる後遺障害です。
足指の後遺障害は、足の指がなくなったり、機能が失われたりした場合に認められます。
以下で、それぞれについて説明します。
下肢の障害
下肢の後遺障害には、欠損障害と機能障害、変形障害、短縮障害があります。以下で、順番に確認しましょう。
欠損障害
欠損障害は、股関節から足首にかけての脚が物理的に失われたケースで認められます。
脚のうち、どのくらいの部分が失われたのかによって、等級が異なります。
このとき、脚の3大関節を基準とします。脚の三大関節は、股関節(脚の付け根の関節)と膝関節(膝の部分にある関節)、足関節(足首の関節)です。
また、足の後遺障害認定では「リスフラン関節」という関節が関係します。リスフラン関節とは、足の甲のあたりにある関節です。
下肢の欠損障害は、片脚に障害が残った場合よりも両足に後遺障害が残った場合の方が、等級が高くなります。右足か左足かによる区別はありません。
下肢の欠損障害で認められる後遺障害の等級は、以下の通りです。
1級5号 |
両下肢をひざ関節以上で失ったもの |
2級4号 |
両下肢を足関節以上で失ったもの |
4級5号 |
1下肢をひざ関節以上で失ったもの |
4級7号 |
両足をリスフラン関節以上で失ったもの |
5級5号 |
1下肢を足関節以上で失ったもの |
7級8号 |
1足をリスフラン関節以上で失ったもの |
「下肢を膝関節以上で失ったもの」は、次のいずれかのケースです。
- 股関節の部分寛骨と大腿骨が離断してしまった場合
- 股関節と膝関節の間の部分で下肢が切断された場合
- 膝関節の部分において、大腿骨と脛骨及び腓骨が離断してしまった場合
「下肢を足関節以上で失ったもの」は、次のいずれかのケースです。
- 膝関節と足関節の間の部分で下肢が切断された場合
- 足関節の部分で、脛骨及び腓骨と距骨が離断してしまった場合
「リスフラン関節以上で失ったもの」は、次のいずれかのケースです。
- 足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨と3つの楔状骨)において切断された場合
- リスフラン関節の部分において、中足骨と足根骨が離断してしまった場合
機能障害
下肢の機能障害とは、下肢が物理的には失われていないけれども、関節が動かなくなるなどして、機能が失われたり低下したりした場合に認められる後遺障害です。
機能障害の発生とその程度については、ケガをした側(患側)と、ケガをしなかった側(健康な側)の可動域を比べて、可動域が制限された程度によって判断します。
1級6号 |
両下肢の用を全廃したもの |
5級7号 |
1下肢の用を全廃したもの |
6級7号 |
1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの |
8級7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの |
10級11号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの |
12級7号 |
1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの |
「下肢の用を全廃したもの」は、下肢の3大関節がすべて、強直してしまった場合です。これに足して、足指の機能が全廃したときも、これに含まれます。
「強直」は、関節が完全強直するか、それに近い状態になった状態です。強直に近い状態とは、具体的には、関節の可動域が、健康な側の10%程度以下になってしまった場合を言います。
「関節の用を廃したもの」は、以下のいずれかに該当する場合です。
- 関節が強直した場合(関節の主要な運動が複数ある場合には、すべての主要運動ができなくなる必要があります)
- 関節が完全弛緩性麻痺状態になるか、それに近い状態になった場合(主要運動が複数の場合には、すべての主要運動が麻痺する必要があります)
なお、「それに近い状態」とは、他者が無理に動かすと動くけれども、自力では健康な側の10%以下の可動域になってしまった状態です。
- 関節に人工関節・人口骨頭を挿入し、その可動域が健康な側の2分の1以下になってしまった場合(主要運動が複数の場合には、うち一つの主要運動が健康な側の2分の1以下になっていれば足ります)
「関節の機能に著しい障害を残すもの」は、次のどれかに該当するケースです。
- 関節可動域が、健康な側の2分の1以下になってしまった場合(主要運動が複数の場合には、うち一つが健康な側の2分の1以下になっていれば足ります)
- 関節に人工関節・人口骨頭を挿入した場合で、健康な側の2分の1以下にはなっていない場合
「関節の機能に障害を残すもの」とは、関節の可動域が健康な側の4分の3以下になってしまった場合です。(主要運動が複数の場合には、うち一つが健康な側の4分の3以下になっていれば足ります。
下肢の動揺関節
下肢の関節障害には、動揺関節というものもあります。動揺関節とは、関節が異常な方向に動いたり、異常な動きをしたりする場合で、靱帯損傷を受けると発生しやすいです。動揺関節が発生した場合、関節の機能障害に準じて、以下の通り、後遺障害が認定されます。
- 常に硬性補装具が必要な場合には、8級
- ときどき硬性補装具が必要な場合には10級
- 重労働をするとき以外は硬性補装具が不要な場合には12級
習慣性脱臼・弾発ひざ
「習慣性脱臼」とは、軽く力が加わっただけで簡単に脱臼してしまうようになった状態です。
「弾発ひざ」は、膝を曲げるときに、一定の角度になると、ばねのように曲がってしまうようになる障害で、ばね膝とも呼ばれます。半月板損傷によって発生することが多いです。
習慣性脱臼や弾発ひざになった場合には、12級の関節機能障害に準じて後遺障害認定を受けられます。
変形障害
変形障害は、偽関節や骨の変形が起こった場合に認定される後遺障害です。偽関節とは、骨折した部分がきちんと固まらず、本来関節ではない場所が曲がるようになってしまった状態で、変形は、骨折した場所が異常に曲がって固まった状態のことです。
また、これ以外に「動揺関節」の場合にも後遺障害が認定されます。動揺関節とは、他者が動かすことにより、関節が異常な方向や範囲で動いてしまう状態です。靱帯を断裂した場合などに発生しやすいです。
変形障害で認められる後遺障害の内容と等級は、以下の通りです。
7級10号 |
1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの |
8級9号 |
1下肢に偽関節を残すもの |
12級8号 |
長管骨に変形を残すもの |
「偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの」は、次のいずれかに該当し、常に硬性補装具が必要になった場合です。
- 大腿骨の骨幹部か骨幹端部に癒合不全が残った場合
- 脛骨と腓骨の両方において、骨幹部または骨幹端部に癒合不全が残ったケース
- 脛骨の骨幹部か骨幹端部に癒合不全が残ったケース
「偽関節を残すもの」は、次のいずれかの場合です。
- 大腿骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全が残り、常にではないが、ときどき硬性補装具が必要になったケース
- 脛骨と腓骨の両方の骨幹部または骨幹端部に癒合不全が残り、ときどき硬性補装具が必要になったケース
- 脛骨の骨幹部か骨幹端部に癒合不全が残り、ときどき硬性補装具が必要になったケース
「長管骨に変形を残すもの」は、次のいずれかに該当する場合です。
- 大腿骨に変形が残り、15度以上曲がって不正癒合したケース
- 脛骨に変形が残り、15度以上曲がって不正癒合したケース
- 腓骨が著しく変形して、外から見てもわかるほどに不正癒合したケース
- 大腿骨の骨端部に癒合不全が残ったケース
- 脛骨の骨端部に癒合不全が残ったケース
- 腓骨の骨幹部または骨幹端部に癒合不全が残ったケース
- 大腿骨の骨端部のほとんどが欠損してしまったケース
- 脛骨の骨端部のほとんどが欠損してしまったケース
- 骨端部をのぞいた大腿骨の直径が3分の2以下になったケース
- 骨端部をのぞいた脛骨の直径が3分の2以下になったケース
- 大腿骨が外旋45度以上または、内旋30度以上となり、変形癒合したケース
短縮障害
下肢の短縮障害は、ケガの影響により、足の長さが異なる状態になってしまった場合に認められます。認定される後遺障害の等級は、以下の通りです。
8級5号 |
1下肢を5センチメートル以上短縮したもの |
10級8号 |
1下肢を3センチメートル以上短縮したもの |
13級8号 |
1下肢を1センチメートル以上短縮したもの |
足指の障害
足指の後遺障害には、足指の欠損障害と機能障害があります。
欠損障害
足指の欠損障害は、足の指が物理的に失われてしまった場合に認定されます。
5級8号 |
両足の足指の全部を失ったもの |
8級10号 |
1足の足指の全部を失ったもの |
9級14号 |
1足の第1の足指を含み2以上の足指を失ったもの |
10級9号 |
1足の第1の足指又は他の4の足指を失ったもの |
12級11号 |
1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったもの又は第3の足指以下の3の足指を失ったもの |
13級9号 |
1足の第3の足指以下の1又は2の足指を失ったもの |
「足指を失ったもの」とは、足指の付け根にある中足指節関節の部分から、足指が失われた場合で、足の指が根元からなくなったケースです。
機能障害
足指の機能障害は、足指が途中の部分から失われた場合や、可動域が制限された場合などに認められます。認定される等級は、以下の通りです。
7級11号 |
両足の足指の全部の用を廃したもの |
9級15号 |
1足の足指の全部の用を廃したもの |
11級9号 |
1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの |
12級12号 |
1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの |
13級10号 |
1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの |
14級8号 |
1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの |
「足指の用を廃したもの」は、次のいずれかの状態になった場合です。
- 親指の末節骨(指先の骨)の長さが2分の1以上失われた場合
- 親指以外の足指が、中節骨(指の真ん中の骨)か基節骨(指の根元の骨)の部分で切断された場合
- 親指以外の足指が、遠位指節間関節(指先の関節)または近位指節間関節(指の根元に近い側の関節)で離断した場合
- 親指の中足指節間関節(根元の関節)又は指節間関節(指の途中にある関節)の可動域が2分の1以下になった場合
- 親指以外の足指の中足指節間関節(根元の関節)又は近位指節間関節(指の根元に近い側の関節)の可動域が2分の1以下になった場合
神経障害
骨折後、痛みやうずきが残った場合には、神経障害として、程度に応じて12級または14級が認定されます。
以上のように、足の後遺障害にもいろいろなケースがあります。適切な治療を続け、症状固定したら、確実な方法で後遺障害の認定請求を行いましょう。