目次
醜状障害とは?
- 傷跡ややけど跡などの「見た目」に関する後遺障害
- 醜状の部位、醜状の程度によって、後遺障害等級が変わります
交通事故でケガをすると、傷跡ややけどの跡、手術痕、色素沈着や血腫、欠損や陥没が生じたなど、体の表面、見た目に、交通事故被害の跡が残ってしまうことがあります。
このような跡、見た目の変化は、他人をして醜いと思わせる程度、人目につく程度以上である場合、醜状障害(しゅうじょうしょうがい)として、後遺障害認定されることがあります。 体のどの部位に、どの程度の醜状(傷跡などの見た目の変化)が生じたかによって、後遺障害の等級が異なります。
醜状障害の体の部位による分類
- 頭・顔・首(外貌)の醜状
- 胸やお腹、背中やおしり(外貌及び露出面以外)の醜状
- 腕や手指・足(露出面)の醜状
醜状障害は、外貌(頸部・顔面部・頭部)、露出面(上肢・下肢。いわゆる腕・手・指・太もも・膝下・足・足指)、外貌及び露出面以外の部位の、いずれの部位に傷跡などの醜状が生じるかによって、後遺障害の等級が分けられています。
そしてさらに、各部位ごとに、どの程度の醜状が生じたかによって、後遺障害の等級が分かれます。
外貌醜状(頭・顔・首)と後遺障害等級
後遺障害7級12号 | 外貌に著しい醜状を残すもの |
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後遺障害9級16号 | 外貌に相当程度の醜状を残すもの |
後遺障害12級14号 | 外貌に醜状を残すもの |
頭部・顔面・頸部に残った交通事故による傷跡等の醜状障害は、上記、いずれかの後遺障害等級に認定されることになります。
- 7級12号、9級16号、12級14号の違い
三者の違いは、上記のとおり、外貌に「著しい醜状」、「相当程度の醜状」または単なる「醜状」のいずれが残ったかどうかです。
具体的には、次のとおりです。
●「著しい醜状」(後遺障害7級12号)
・頭部に、手のひら大以上の瘢痕又は頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
・顔面部に、鶏卵大面以上の瘢痕又は10円銅貨大以上の組織陥没
・頸部に、手のひら大以上の瘢痕
●相当程度の醜状(後遺障害9級16号)
・顔面部に、長さ5センチメートル以上の線状痕で、人目につく程度以上のもの
●「醜状」(後遺障害12級14号)
・頭部に、鶏卵大面以上の瘢痕又は頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
・顔面部に、10円銅貨大以上の瘢痕又は長さ3センチメートル以上の線状痕
・頸部に、鶏卵大面以上の瘢痕上記から分かるとおり、「著しい醜状」>「相当程度の醜状」>「醜状」の順に、重度な醜状として、後遺障害の等級が高く、後遺障害慰謝料や逸失利益も高額になります。
具体的に、後遺障害慰謝料では、自賠責基準おいても
・7級12号 : 409万円(弁護士基準では900~1100万円)
・9級16号 : 245万円(弁護士基準では600~700万円)
・12級4号 : 93万円(弁護士基準では250~300万円)
といった違いが出ます。※認定申請をした被害者本人の手のひらの大きさを基準に、計測が行われます。
露出面の醜状(上肢・下肢)と後遺障害等級
後遺障害12級 | 上肢又は下肢の露出面に著しい醜状を残すもの |
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後遺障害14級4号 | 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの |
後遺障害14級5号 | 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの |
腕や手指、足といった上肢又は下肢に残った交通事故による傷跡等の醜状障害は、上記、いずれかの後遺障害等級に認定されることになります。
- 12級と14級4号又は14級5号の違い
後遺障害14級4号又は14級5号が、上肢又は下肢に手のひらの大きさの醜いあとを残すものであるのに対し、後遺障害12級の「著しい醜状」とは、手のひらの3倍程度以上の醜いあとを残すものであるときをいいます。
手のひらの3倍程度以上の醜あとの方が広範囲で、重度な醜状として、後遺障害の等級が高く、後遺障害慰謝料や逸失利益も高額になります。
具体的に、後遺障害慰謝料では、自賠責基準おいても
・12級 : 93万円(弁護士基準では250~300万円)
・14級4号又は14級5号 : 32万円(弁護士基準では90~120万円)
といった違いが出ます。
外貌及び露出面以外の醜状(胸部・背部・腹部・臀部)と後遺障害等級
後遺障害12級 | 胸部と腹部、又は、背部と臀部の全面積の2分の1以上の醜いあとを残すもの |
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後遺障害14級 | 胸部と腹部、又は、背部と臀部の全面積の4分の1以上の醜いあとを残すもの |
胸の辺り(デコルテライン)やお腹、背中やおしりといった、胸部、腹部、背部、臀部に残った交通事故による傷跡等の醜状障害は、上記、いずれかの後遺障害等級に認定されることになります。
- 12級と14級の違い
両者の違いは、上記のとおり、醜状の面積です。後遺障害12級が、14級の倍以上の広範囲に、醜いあとを残すものであるときをいい、重度な醜状として、後遺障害の等級が高く、後遺障害慰謝料や逸失利益も高額になります。
具体的に、後遺障害慰謝料では、自賠責基準おいても
・12級 : 93万円(弁護士基準では250~300万円)
・14級 : 32万円(弁護士基準では90~120万円)
といった違いが出ます。
外貌及び露出面以外の醜状(胸部・背部・腹部・臀部)と後遺障害等級
後遺障害12級 | 胸部と腹部、又は、背部と臀部の全面積の2分の1以上の醜いあとを残すもの |
---|---|
後遺障害14級 | 胸部と腹部、又は、背部と臀部の全面積の4分の1以上の醜いあとを残すもの |
胸の辺り(デコルテライン)やお腹、背中やおしりといった、胸部、腹部、背部、臀部に残った交通事故による傷跡等の醜状障害は、上記、いずれかの後遺障害等級に認定されることになります。
- 12級と14級の違い
両者の違いは、上記のとおり、醜状の面積です。後遺障害12級が、14級の倍以上の広範囲に、醜いあとを残すものであるときをいい、重度な醜状として、後遺障害の等級が高く、後遺障害慰謝料や逸失利益も高額になります。
具体的に、後遺障害慰謝料では、自賠責基準おいても
・12級 : 93万円(弁護士基準では250~300万円)
・14級 : 32万円(弁護士基準では90~120万円)
といった違いが出ます。
醜状障害と後遺障害認定のポイント
外貌醜状の男女差の撤廃 | 外貌醜状には、かつて男女で後遺障害の等級に格差がありました |
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醜状障害の面接調査 | 後遺障害認定の審査は、書面審査が原則ですが、醜状障害は面接調査があります |
醜状障害の申請時期 | 醜状障害の後遺障害申請は、受傷から6ヶ月経過後に行いましょう |
醜状障害の逸失利益と慰謝料 | 保険会社との示談交渉では、醜状障害による逸失利益が争点になることが多い |
▼ POINT 1. 外貌醜状の男女差の撤廃
外貌醜状は、かつて、後遺障害の等級に男女格差がありました。
具体的には、女子の外貌に醜状を残す場合は後遺障害12級15号、男子の外貌に醜状を残す場合は後遺障害14級10号にあたるなどとして、男性の場合の等級が女性の場合に比して低い取り扱いとなっていました。
これは、同じような外貌醜状が残ったとしても、男性よりも女性が被る精神的苦痛等が大きいと考えられていたためです。
けれど、このような男女格差は違憲であると判断され、2011年、外貌醜状に関する男女格差は撤廃されました(※2010年6月10日以降に発生した交通事故に、新基準が適用されます)。
▼ POINT 2. 醜状障害の面接調査
後遺障害等級認定の審査は、基本的に、書類審査で行われます(詳しくはこ後遺障害の手続き・流れへ)。
けれど、醜状障害の審査では、例外的に、面接調査が行われます。
これは、醜状障害が、単に醜状の有無だけで審査されるものではなく、醜状の程度や形態、大きさや部位などから、人目につくものであるか、他人をして醜いと思わせる程度のものであるかという主観的な基準で審査されるためといわれています。
担当官が、実際に目で見て、それらを判断・確認する必要があるのです。
醜状障害について後遺障害の認定申請を行うと、面接調査の日程が決められ、被害者が自賠責調査事務所に赴き、面接調査を受けます。この面接には、弁護士の同行・立ち会いも認められています。
▼ POINT 3. 醜状障害の申請時期
ケガや傷の跡、やけどの跡や手術の跡などは、受傷後、時間の経過ととともにある程度改善し、目立たなくなることがあります。
そのため、醜状障害の後遺障害認定申請は、受傷から6ヶ月程度経過してからとされています。
交通事故で複数のけがを負った場合で、他のけがについて未だ症状固定していない場合でも、醜状障害について、個別に後遺障害申請することができます。
傷跡などは、6ヶ月経過後も、わずかかもしれませんが、改善、目立たなくなることがあります。わずかな大きさの違い、見た目の違いで後遺障害の認定がされないケースもありますので、気になる傷跡などがある場合、6ヶ月経過後なるべく早い段階で、醜状障害の後遺障害申請をされるとよいでしょう。
▼ POINT 4. 醜状障害の逸失利益と慰謝料
交通事故による後遺症が後遺障害と認定されると、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益が認定され、単に後遺症で留まる場合と比べ、示談金・賠償金が高くなります。
後遺障害慰謝料とは、交通事故で後遺障害を負ったことに対する精神的苦痛に対する損害賠償です。
これに対し、後遺障害逸失利益とは、交通事故で後遺障害を負ったために、労働能力を一定割合喪失し、労働などによって得られたであろう利益が得られなくなったことに対する損害賠償です。
醜状障害でも、交通事故で顔などの外貌に傷跡(醜状)が残り、精神的苦痛を被ったため、その分、慰謝料が請求できるというのは、分かりやすいと思います。
これに対し、醜状障害では、後遺障害逸失利益が争われることが大変多いです。これは、醜状障害が、あくまで見た目の変化であり、体の運動能力、機能面に変化を生じさせるものではないためです。そのため、相手保険会社からは、労働能力の喪失はない、醜状障害による収入の減少はないとして、争われるのです。
確かに、醜状障害は、体の運動能力・機能低下はないかもしれませんが、だからといって、労働能力の喪失や収入の減少がないと言えるでしょうか?
その人の見た目が、収入に少なからず影響する職業は決して少なくない、むしろ多いと言えます。
モデルや女優・俳優などの芸能関係はもちろん、ホストやホステス、美容関係の仕事も影響があるかもしれません。それだけでなく、あらゆる業種の接客業、営業職などでも、影響が出る可能性があります。
また、醜状障害があることによって、人と関わることに消極的になるなど、仕事や対人関係に萎縮効果を及ぼすこともあり得ます。
醜状障害の逸失利益は、被害者自身の年齢、職業、将来の希望などのほか、醜状障害が被害者本人に及ぼす具体的な影響を主張・立証していくことがとても大切です。
なお、裁判例でも、醜状障害の逸失利益が否定されたケースはあります。ですが、その場合でも、例えば、逸失利益として考慮されない分、後遺障害慰謝料で考慮するなどの調整が図られるべきです。実際に、裁判例で、そのような調整が行われたケースも少なくありません。