歩道と車道の区別のある道路の歩道上を歩行者が歩いているときに、道路や道路外から歩道に入ってきた自動車と歩行者が接触した交通事故です。
このような場合、歩行者の過失割合は0%、
自動車の過失割合は100%です。
自動車は、歩道と車道の区別のある道路を通行するときには、必ず車道を通らなければなりません(道路交通法17条1項)。歩道を通ることができるのは、道路の外の施設に入るときなどのやむを得ない場合に横切るときなどに限られます。
また、やむを得ず歩道に入る場合にも、必ず歩道の前で一旦停止して、歩行者の通行を妨害しないようにしなければなりません(道路交通法17条2項)。
さらに、歩道を通行するときには、特に歩行者に注意して徐行しなければならない義務も負っています(道路交通法9条)。このように、歩道上では歩行者の保護は絶対的なので、自動車には高い注意義務違反が認められて、過失割合が100%となります。
多くの交通事故のパターンでは、基本の過失割合があったとしても、さまざまな要素によって、修正されるのですが、歩道上での歩行者と自動車の接触事故の場合、歩行者の保護が絶対的であるため、どのような要素があろうとも、修正はありません。歩行者に過失を認めることができず、常に自動車の過失割合が100%となります。歩行者が立ち止まっていたとしても、急に車の方へ走ってきたり、飛び出してきたりしても、歩道上である限り、基本的に歩行者に過失は認められません。
ただし、歩行者が、車の側面に衝突してきたケースにおいては、車が避けようのないこともあるので、歩行者に一定の過失を認めるべきケースがあると考えられています。その場合、双方の位置関係や状況、車の速度などによって、個別に過失割合が決定されることになります。
歩道と車道の区別のない道路上で、歩行者が道路の右端を歩いていたところ、前方から対向してきた自動車や後ろから来た自動車と接触した交通事故です。
このような場合、基本の過失割合は、
歩行者が0%、自動車が100%です。
歩行者は、道路を歩くときに、右端によって歩かなければならない義務を負っています(道路交通法10条1項)。
そして、歩行者が右端を通行している場合、自動車は、歩行者との距離を安全に保ち、徐行するなどして危険を避けなければなりません(道路交通法18条2項)。
そこで、そのような義務に違反して歩行者に接触した自動車に過失が認められ、過失割合は100%となります。
右端を歩いていた歩行者に過失割合は認めらず、0%となります。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって、修正される可能性があります。
たとえば、歩行者がふらふら歩きをしていた場合、自動車が事故を避けることが難しくなるため、歩行者の過失割合が+5%となります。
また、歩行者が幼児や障害者のケースでは、自動車により高い注意義務が課されるので、歩行者の過失割合が-5%となります。
自動車が酒気帯び運転や時速15キロメートル以上30キロメートル以下のスピード違反をしていた場合など、著しい過失がある場合には、歩行者の過失割合が-5%、自動車が酒酔い運転や時速30キロメートル以上のスピード違反をしていた場合など、重過失がある場合には、歩行者の過失割合が-5%となります。
なお、この類型の交通事故では、夜間や幹線道路、住宅地や商店街、歩行者が児童や高齢者の場合などの修正はありません。
これと類似する事例として、歩行者が道路の左端を通行していたケースが考えられます。この場合、基本の過失割合は、歩行者が5%、自動車が95%となります。
歩行者が、道路の端ではない場所(中央など)を通行していたケースもあります。道路幅が8メートル以上ある道路の真ん中の部分を歩いていたときには、歩行者の過失割合が20%、自動車の過失割合が80%となります。それ以外の場合(道路幅が狭い場合など)に歩行者が道路の中央を歩いていていた場合には、歩行者の過失割合が10%、自動車の過失割合が90%となります。