歩道と車道の区別のない道路上において、歩行者が右端を歩いていたところ、前から来た自動車や後ろから来た自転車と接触した交通事故です。
このような場合の基本の過失割合は、
歩行者が0%、自転車が100%です。
歩行者は、歩道と車道の区別のない道路上を通行するときには、基本的に右端を歩かなければなりません(道路交通法10条1項)。そして、歩行者が右端を歩いているとき、自転車は、歩行者との間に十分な距離あけ、徐行するなどして安全を尽くす義務を負っています(道路交通法18条2項)。そこで、このようなケースでは、基本的に自転車の過失によって引き起こされた交通事故であると考えられるため、自転車の過失割合が100%となります。歩行者に過失は認められません。
また、この事故に類似するものとして、歩行者に左端通行が認められていないにもかかわらず、歩行者が左側の端を通行していたケースがあります。その場合、歩行者には、道路交通法10条1項違反があるため、過失が認められます。歩行者の過失割合は5%となり、自転車の過失割合が95%となります。
また、歩行者が道路の両側以外の場所(道路の中央など)を通行していた場合には、歩行者の過失割合が10%、自転車の過失割合が90%となります。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって修正される可能性があります。
まず、歩行者が予想外のふらふら歩きをして危険を発生させた場合には、歩行者の過失割合が+5%となります。
この場合、「予想外の行動」であったことが必要で、予想される範囲のふらふら歩きでは、過失割合の修正はありません。
自転車が片手運転をしていたり、著しい前方不注視があったりして著しい過失が認められる場合には、歩行者の過失割合が-5%となりますし、自転車が酒酔い運転などをしていて重過失がある場合にも、歩行者の過失割合が-5%となります。
なお、この類型(歩行者が右側を歩いていた場合)の交通事故の場合には、道路が幹線道路の場合や住宅街、商店街の場合、歩行者が児童や高齢者の場合、歩行者が集団で歩行していた場合の過失割合の修正は行われません。
事故現場が住宅街や商店街であった場合、人の往来が多く、自転車の注意義務が高まるので、
歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が幼児や身体障害者であった場合には、歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が児童や高齢者であった場合には、歩行者に適切な行動を期待することが難しくなるので、自転車の注意義務が上がり、歩行者の過失割合が-5%となります。
同じ理由で、歩行者が幼児や障害者であった場合、歩行者の過失割合が-10%となります。
歩行者が集団で通行していた場合には、自転車に課される注意義務が上がるので、歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車が片手運転をしていたり、著しい前方不注視があったりして著しい過失があった場合には、歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車が酒酔い運転をしていたり、ブレーキが壊れた状態で運転していたりして、自転車に重過失がある場合、歩行者の過失割合が-20%となります。