歩道を歩いている歩行者と、前方から歩道を走行してきた自転車や、後ろから歩道を走行してきた自転車が接触した交通事故です。
このような場合の基本の過失割合は、
歩行者が0%、自転車が100%となります。
自転車は、原則として車道を走行しなければならず、やむを得ないときしか歩道を走行することができません(道路交通法17条1項)。
また、歩道を走行するときには、左側により、歩行者を優先させ、歩行者に危険を与えるおそれがあるときには、一時停止しなければなりません(道路交通法63条の4第2項)。
そこで、この義務に違反して歩道上の歩行者に接触した自転車には、高い過失が認められ、自転車の過失割合が100%となります。歩道上の歩行者には絶対的とも言える保護が及ぶので、歩行者には、一切の過失はありません。
また、これと類似する事例として、自転車が歩道の外から歩道に進入しようとしたり、歩道を通過しようとしたりしたときに歩道上の歩行者と接触する事故があります。この場合にも、やはり上記と同じ理由で、自転車の過失割合が100%、歩行者の過失割合が0%となります。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって修正されることがあります。
たとえば、歩道を歩いていたり、歩道上に立っていたりした歩行者が、急に歩道を徐行している自転車に衝突してきた場合などには、歩行者の過失割合が+5%となります。
歩行者が児童や高齢者であった場合には、歩行者に適切な行動を期待することが難しくなるので、歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が幼児や障害者であった場合には、歩行者に適切な行動を期待することがさらに難しくなるので、歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車に著しい操作不適切や片手運転などの著しい過失があった場合には、歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車が酒酔い運転をしていたなど重過失があった場合には、歩行者の過失割合が-20%となります。
これに対し、自転車が歩道に進入しようとしたり、歩道を横断しようとして歩行者に接触した場合には、過失割合の修正が行われず、常に自転車の過失割合が100%となります。
路側帯を通行していた歩行者と、同じく路側帯を、歩行者の前からあるいは後ろから走行してきた自転車が接触した交通事故です。
このような場合の基本の過失割合は、
歩行者が0%、自転車が100%です。
自転車は、路側帯を通行するとき、歩行者の通行を妨害しない速度と方法で通行しなければなりません(道路交通法17条の2第2項)。そこで、この義務に反して路側帯上を歩行している歩行者に接触した自転車には高い過失が認められ、過失割合は100%となります。歩行者には基本的に過失が認められません。
これと類似する交通事故として、自転車が路側帯の外側から路側帯内に進入しようとしたり、路側帯を横断しようとしたりして歩行者に接触するパターンがあります。
この場合にも、上記と同じ理由で自転車の過失が高くなるので、自転車の過失割合が100%、歩行者の過失割合が0%となります。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって修正される可能性があります。
たとえば、歩行者が少し注意したら自転車との接触を避けることができたのに、ふらつき歩きなどをして自転車の方に急に飛び出してきた場合など、歩行者が危険な行動を行った場合には、その危険性に応じて、歩行者の過失割合が+5~10%となります。
反対に、歩行者が児童や高齢者であった場合には、歩行者に適切な行動を期待することが難しくなるので、歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が幼児や障害者であった場合、歩行者が適切な行動をとることがさらに難しくなり、自転車側に高い注意義務が課されるので、歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車が酒気帯び運転をしていたり、スマホなどを見ながら運転していたりすると、自転車に著しい過失があると言えるので、歩行者の過失割合が-5%となります。
自転車が酒酔い運転をしていたり、ブレーキが壊れた状態で運転していたりすると、自転車に重過失があると言えるので、歩行者の過失割合が-10%となります。
なお、自転車が路側帯の外から路側帯内に進入しようとしたり、横断しようとしたりして歩行者と接触した交通事故においては、過失割合の修正はありません。自転車の過失が高いとされて、常に自転車の過失割合が100%、歩行者が0%となります。
歩行者の通行が許されていない車道上で、歩行者が前から来た自動車や後ろから来た自動車と接触した交通事故です。
このような場合の基本の過失割合は、
歩行者が25%、自転車が75%となります。
自転車は、道路を通行するとき、他の車両や歩行者に危険を発生させないような速度と方法により、安全に運転しなければなりません(道路交通法70条)。それに違反して歩行者に接触した自転車には75%の過失割合が認められます。
一方、歩行者は、歩道と車道の区別のある道路上では、基本的に歩道を歩かなければならない義務を負っています(道路交通法10条2項)。歩行者の通行が許されていない場所で車道を歩いていた歩行者にも過失が認められ、歩行者の過失割合が25%となります。
また、これに類似するものとして、歩行者による通行が許されている車道上の交通事故があります。この場合、歩行者の注意義務が軽減されるので、歩行者の過失割合が10%、自転車の過失割合が90%となります。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって修正される可能性があります。
たとえば、事故現場が幹線道路であった場合、歩行者が車道を歩くことの危険性が高まるので、
歩行者の過失割合が+5%となります。
歩行者が予想外のふらふら歩きをした場合には、歩行者の過失割合が+10%となります。予想できる範囲内のふらふら歩きの場合には、修正はありません。
事故現場が住宅街や商店街であった場合、人の往来が多く、自転車の注意義務が高まるので、
歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が児童や高齢者であった場合には、歩行者に適切な行動を期待することが難しくなるので、自転車の注意義務が上がり、歩行者の過失割合が-5%となります。
同じ理由で、歩行者が幼児や障害者であった場合、歩行者の過失割合が-10%となります。
歩行者が集団で通行していた場合には、自転車に課される注意義務が上がるので、歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車が片手運転をしていたり、著しい前方不注視があったりして著しい過失があった場合には、歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車が酒酔い運転をしていたり、ブレーキが壊れた状態で運転していたりして、自転車に重過失がある場合、歩行者の過失割合が-20%となります。