道路上において、前方に停止している四輪車(Y)がドアを開けたところに、後ろから走行してきた単車(X)が接触した交通事故です。Xが、Yの右側のドアに接触した場合も、Yの右側のドアに接触した場合も、同じ扱いとなります。
このような場合の基本の過失割合は、
Xが10%、Yが90%です。
四輪車は、ドアを開くとき、危険を発生させないように安全を確認してから開くべき義務を負っています(道路交通法71条4の3)。それにもかかわらず、ドアを開いて事故を発生させた四輪車(Y)には、90%の過失割合が認められます。
ただし、単車(X)の方にも前方を注視して安全に運転すべき義務があるので(道路交通法70条)、それに違反してドアに衝突している点で、10%の過失割合が認められます。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって、修正される可能性があります。
たとえば、事故が発生したのが夜間のときでは、道路を走行してきた単車(X)が四輪車(Y)を発見することが困難となるため、Xの過失割合が-5%となります。また、停車中のYは、ハザードランプを点灯させて、後続車に注意を促すべき義務を負いますが、これを点灯させなかった場合には、Xの過失割合が-5%となります。Xが相当程度Yに接近してから、直前にドアを開けた場合、Xが事故を防ぐ可能性が低くなるため、Xの過失割合は-10%となります。
反対に、たとえば、タクシーが合図を出して停車した場合や、トランクを開いている場合など、Yからの降車が予測される事情があった場合には、XはYのドア解放を予測すべきと言えるので、Xの過失割合が、+10%となります。
Xに速度超過違反があると、程度に応じてXの過失割合が、+10~20 %となります。
Xにおいて、その他の著しい過失や重過失があった場合にも、Xの過失割合は+10~20%となります。狭い道路で、通常は単車が四輪車の横を通りに抜けることが考えにくい状況であった場合にも、Xの過失割合が+10~20%、上がります。
なお、ドア開放時の事故では、四輪車(Y)の過失が大きいため、もともとYの過失割合が90%と、かなり高くなっています。そこで、あえてYの著しい過失や重過失による修正は加えられません。