追い越し禁止場所ではない道路上において、後ろから走行してきた単車(X)が、前方を走行していた四輪車(Y)に接触した交通事故です。
このような場合の基本的な過失割合は、
Xが70%、Yが30%です。
後ろから追い越そうとする単車は、前方の車との間で、十分な車間距離をとらなければなりません(道路交通法26条)し、危険を避けるべき義務があります。そこで、これに違反して接触事故を起こした単車(X)には、
高い過失があると言え、その過失割合は70%となります。
一方、追い越される四輪車(Y)の側にも、追い越される際には危険が発生しないように、左側による義務などがあるため(道路交通法27条2項)、不注意で事故の結果につながった点で、30%の過失割合が認められます。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって修正されることがあります。
1つは、四輪車(Y)が避譲義務違反をしていたケースです。避譲義務とは、追い越されようとする車が、道路の左側によって、後ろの車に道を譲るべき義務です(道路交通法27条2項)。
前方を走行していたYが避譲義務に違反した場合、Yの過失割合は+10%となります。
また、道路交通法は、前方車は、後続車に追いつかれた場合、追い越しが終わるまでは速度を上げてはいけないと規定しています(道路交通法27条1項)。そのようなことをすると、非常に危険があるためです。
前方を走行していたYがこれに違反して速度を上げた場合には、Yの過失割合が+20%となります。
さらに、事故現場が、凹凸の多い場所、雨が降ってスリップしやすくなっていた場所、見通しがきかない場所、歩行者が多い場所、多数の車両が通行している場所である場合には、
追い越しすることが危険なので、単車(X)の過失割合が+5%となります。
これと類似したケースで、道路交通標識などによって、「追い越し禁止」とされている場所での交通事故があります。
他に、道路の曲がり角、上り坂の頂上、急な下り坂、トンネルなどでも同じです。これらの場合には、Xに高い過失が認められるので、Xの過失割合が80%、Yの過失割合が20%となります。
対向車線において、転回(Uターン)しようとしていた四輪車(Y)に対し、直進してきた単車(X)が接触して発生した交通事故です。
このような場合の基本的な過失割合は、
Xが10%、Yが90%です。
道路交通法では、歩行者や他の車両の交通を妨げるおそれのある場合、転回してはいけないと定められています(道路交通法25条の2第1項)し、転回するときには、30メートル手前から合図しなくてはならないとされています(道路交通法53条1項、2項)。この趣旨からすると、転回車には、直進車より高い注意義務が課されるので、転回中の四輪車(Y)に基本的に過失が認められ、その過失割合は90%となります。
一方、直進してきた単車(X)にも前方を注意して慎重に運手すべき義務があるので、過失が認められ、その割合は10%となります。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって修正されます。
まず、直進してきた単車(X)が時速15キロメートル以上の速度違反をしていたら、Xの過失割合が+10%となります。時速30キロメートル以上の速度違反があると、Xの過失割合は+20%となります。また、Xが著しい脇見運転をしていたり、著しくハンドル操作が不適切だったりした場合には、Xの過失割合が+10~20%となります。
また、転回車(Y)が転回の合図をしていなかった場合には、Xの過失割合が-10%となります。
事故現場が、見通しのきかない場所や交通が特に頻繁で、転回が危険な場所だった場合には(転回危険場所)、Xの過失割合が、-10%となります。さらに、道路標識などによって転回が禁止されている「転回禁止場所」で転回していた場合には、Xの過失割合が-20%となります。
これと類似した事例として、四輪車が対向車線を直進、単車が転回していた場合に生じる交通事故があります。つまり、単車と四輪車が入れ替わっているということです。この場合の基本の過失割合は、四輪車が70%、単車が30%となります。単車の場合、車体が小さく、事故発生を予想し、避けることが四輪車より難しいので、四輪車よりも過失割合が低くなるためです。このことを、単車修正と言います。
渋滞している道路を走行してきた単車(X)と、渋滞道路と交差する道路を走行してきた四輪車(Y)が、信号機の設置されていない交差点で接触した出会い頭の交通事故です。
このような場合の基本の過失割合は、
Yが70%、Xが30%です。
渋滞している道路の交差点に進入しようとするとき、四輪車(Y)は、渋滞の間を縫って走ってくる単車に注意すべき義務を負っています。車両には安全運転義務があるためです(道路交通法70条)。
そこで、前方不注視によって単車(X)を見落としたYには高い過失が認められて、過失割合が70%となります。
ただ、Xの方にも、前方において、渋滞している道路に侵入してこようとする車両に注意すべきであるにもかかわらず、それを怠っているので、やはり前方不注視があると言え、30%の過失割合が認められます。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって、修正されることがあります。
たとえば、四輪車(Y)が、交差点に進入して頭を出してきているのに、単車(X)が不注意で発見できなかったり、発見が遅れたりした場合など、Xに著しい前方不注視があった場合には、Xの過失割合は、過失の程度に応じて、+10%~20%となります。
また、Yがスピード違反をしていたり、酒気帯び運転、著しく不適切なハンドル操作をしていたり、飲酒運転していたりして著しい過失や重過失が認められる場合、Yの過失割合が+20%となります。
また、渋滞中の事故が発生するケースでも、交差点以外の場所が事故現場となるケースがあります。たとえば、四輪車であるXが、ガソリンスタンドや駐車場に入るために、渋滞中の道路をすり抜けようとする場合などです。こういったケースにおいては、直進している単車Xからして、道路を横断しようとしているYの姿を確認しやすく、道路横断をするYからはXの姿を発見しにくくなるので、Yの過失割合が、-5~10%となります。