道路を直進している車(X)と道路外から道路に進入するため右折する車(Y)の交通事故です。
このような場合の基本的な過失割合は、
Xが20%、Yが80%です。
駐車場やガソリンスタンドへの出入り、荷物の搬出入等のために路外に出たり、道路外から道路に進入したりする車と道路を走行している車との事故の内、道路外から道路に出ようと右折しようとした車との事故です。
道路交通法では、道路外の施設又は場所に出入りするために左折又は右折をする車両について、交通の流れに逆らうものとして規制しています(法25条の2)。
他方で,一般に,道路外から道路に進入しようとする車は徐行して道路上に出てくることから、他の車両においても、通常の注意義務を尽くしていれば、道路外出入車があることを認識することが可能です。
したがって、基本の過失相殺率は、道路外出入車が減速、徐行等を履行していることを前提として、直進車に軽度の前方注視義務違反がある場合を想定し、Xには20%の過失、Yには80%の過失が認められます。
ただし、基本の過失割合は、様々な要素によって修正されることがあります。
たとえば、道路外から道路に進入するために右折する(Y)が、道路外からそろそろ出てきて、道路に少し頭を出して待機後に発進して事故が起きた場合、Xの前方不注視違反が重く認められ、過失は+10%となります。
また、道路外から道路に既に右折進入している時に、直進車(Y)が衝突や接触などの事故が起きた場合、Xの過失は+10%となります。
同一道路を対向方向から直進している車両同士の衝突事故で、左側通行車(X)とセンターオーバー車(Y)交通事故です。
このような場合の基本的な過失割合は、
Xが0%、Yが100%です。
車両は、道路の左側部分(道路中央又は中央線から左の部分)を通行しなければなりません(道路交通法17条4項)。また、原則として道路の左側に寄って通行しなければなりません(同法18条1項)。これらは、信号表示に従うことと並ぶ最も基本的なルールであるため、左側部分通行の車両(X)とセンターオーバーした対向車両(Y)とが接触した場合、原則としてセンターオーバーした車両(Y)の一方的過失によるものと考えられるため、Yに100%の過失が認められます。
ただし、基本の過失割合は、様々な要素によって修正されることがあります。
たとえば、センターオーバー車(Y)を発見後、進路を左に変更し、あるいは遅滞なく制動すれば容易に衝突を回避することができたにもかかわらず、センターオーバー車(Y)が早晩自車線内に戻るであろうと軽信したため、あるいは前方不注意(発見遅延)のため、避譲措置をとることができなかった場合、Xの過失は、+10%となります。
その他、センターオーバー車(Y)が他車を追い越している最中の場合に対抗直進車(X)が、15㎞以上の速度違反があった場合、Xの過失は+10%、30㎞以上の速度違反があった場合、Xの過失は+20%となります。
反対に、センターオーバー車(Y)が速度違反をした場合、Xの過失割合は-10~20%になります。
さらに、センターオーバー車(Y)が追越禁止場所や二十追越のように追越自体が禁止されている場合には、対向直進車(X)の過失割合は-10%となります。
道路を直進走行している車(X)と道路を転回・Uターンしようとしている車(Y)の交通事故です。
このような場合の基本的な過失割合は、
Xが20%、Yが80%です。
車両は、歩行者又は他の車両等の正常な交通を妨害するおそれがあるときは、転回してはいけません(道路交通法25条の2第1項)。
転回車・Uターン車は、転回・ターンを完了するまでは、原則として直進車に対して劣後する関係にあると解されます。転回をすることで、直進車(X)の進路をより急激に塞ぐことになるのが通常である点に着目して、転回車(Y)は通常の進路変更よりも注意深くしているのが実情であると考えられる為、Yに80%の過失が認められます。
ただし、基本の過失割合は、様々な要素によって修正されることがあります。
たとえば、直進車(X)に、+15km以上の速度違反があった場合は転回車(Y)が転回を開始するに当たり適切な判断をすることが困難となることから、Xの過失割合は+10%、+30km以上の速度違反があった場合、Xの過失割合は+20%となります。
他方、転回車(Y)の速度が転回するのに適切な速度でない場合には,速度制限に反していなくともYに著しい過失ありといえ、Xの過失割合は-10%となります。
また、見とおしがきかない、交通が特に頻繁な道路など転回危険場所で転回・Uターンした場合、Yにはより重い過失が認められることから、Xの過失割合は-10%になります。
さらに、道路標識等により転回が禁止されている道路の部分の転回禁止場所(同法25条の2第2項)での交通事故はXの過失割合は-20%になります。
それ以外の事例として、転回車(Y)が合図を出さずに突然転回を始めた場合、直進車(X)の過失割合は-10%となります。けれど、直進車(X)が同一道路でなく、対向車として走行してくる場合は、Yが転回することが少なくともその途中で明らかに分かることから、この場合の過失割合はXが15%、Yが85%となります。