信号機のない交差点において、横断道路を通行していた歩行者と、交差点に直進してきた自転車や右左折してきた自転車が接触した交通事故です。
このような場合の基本の過失割合は、
歩行者が0%、自転車が100%です。
車両は、横断道路を通過するときには、横断道路を通行している歩行者がいないかどうか注意して、いつでも止まれるように徐行すべきですし、歩行者がいたら必ず一旦停止して、歩行者の通行を妨害しないようにしなければなりません(道路交通法38条1項)。
そこで、このような義務に違反して、横断道路通行中の歩行者に接触した自転車には高い過失が認められ、自転車の過失割合は100%となります。歩行者には、過失が認められません。
このことは、自転車が直進していても、右左折してきたとしても同じです。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって修正されます。たとえば、事故現場が幹線道路であった場合には、交通量が多いことが普通なので、歩行者の注意義務が上がり、歩行者の過失割合が+5%となります。
歩行者が横断歩道上で立ち止まったり後退したりして危険な行動をとると、その内容に応じて、歩行者の過失割合が+5%となります。渋滞中の車両や駐車している車両の間から歩行者が横断を開始した場合などで、歩行者が容易に避けられる事故を避けなかった場合には、自転車から歩行者を発見することが難しくなることもあるので、歩行者の過失割合が+15%となります。
反対に、事故現場が住宅街や商店街の場合、自転車の注意義務が上がるので、歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が児童や高齢者の場合、適切な行動をとることを期待しにくく、自転車の注意義務が上がるので、歩行者の過失割合が-5%、歩行者が幼児や障害者の場合には、歩行者の過失割合が-10%となります。
歩行者の集団で横断していた場合、自転車の注意義務の程度が上がるので、歩行者の過失割合が-5%となります。
歩道と車道の区別のない狭い道路上の事故であった場合には、歩行者の過失割合が-5%となります。
横断歩道上を走行していた自転車と、同じく横断歩道上を通行していた歩行者が接触した交通事故です。
このような場合の基本の過失割合は、
歩行者が0%、自転車が100%です。
自転車は、横断歩道を通過するときには、横断歩道の直前でいつでも止まれるように徐行しなければならず、横断道路上に歩行者がいるときには、一旦停止して、歩行者の通行を妨害しないように慎重に走行しなければなりません(道路交通法38条1項)。
そこで、こうした義務を怠って歩行者に接触した自転車には100%の過失割合が認められます。歩行者には過失が認められません。
横断歩道上の歩行者は、絶対的な保護を受けるので、自転車が歩行者と同一方向に進行していても、歩行者と対向方向から接触したとしても、自転車の責任は変わらず、常に100%となります。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな要素によって修正されます。たとえば、歩行者が特段の理由もないのに急に飛び出したり、横断歩道上で急に立ち止まったり、突然後退したりなど、危険な行為をしたときには、歩行者の過失割合が+5%となります。
歩行者が児童や高齢者の場合には、歩行者に適切な行為を期待することができず、自転車側の課される注意義務が上がるため、歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が幼児や障害者であった場合も、これと同じ理由で、歩行者の過失割合が-5%となります。
自転車が片手運転や酒気帯び運転、著しいハンドル操作不適切などで著しい過失があった場合には、歩行者の過失割合が-5%となりますし、自転車が酒酔い運転やブレーキが壊れた状態で運転していたなど重過失があった場合には、歩行者の過失割合が-5%となります。
なお、この類型の交通事故の場合、事故現場が幹線道路である場合や住宅地・商店街であった場合、歩行者が集団で横断していた場合、歩道と車道の区別がない場合の過失割合の修正はありません。
自転車横断帯を走行していた自転車と、同じく自転車横断帯を通行していた歩行者が接触した交通事故です。
このような場合の基本の過失割合は、
歩行者が5%、自転車が95%です。
自転車は、横断歩道の近くを通るときには、横断歩道の直前でいつでも止まれるように徐行しなければならず、横断歩道上に歩行者がいるときには、一旦停止して、歩行者の通行を妨害しないように慎重に走行しなければなりません(道路交通法38条1項)。
この場合、横断歩道上ではなく、隣接する自転車横断帯で事故が起こっていますが、横断歩道に隣接する場所である以上、自転車に高い注意義務が課されることは、間違いありません。そこで、こうした義務を怠って歩行者に接触した自転車には95%の過失割合が認められます。歩行者には過失が認められません。
他方、自転車横断帯は自転車が走行するために設けられた通行帯であり、歩行者は横断歩道とは違って絶対的な保護を受けるものでもないので、歩行者にも5%の過失割合が認められます。
なお、自転車横断帯上の交通事故では、自転車が歩行者と同一方向に進行していても、歩行者と対向方向から接触したとしても、自転車と歩行者の過失割合は変わりません。
ただし、基本の過失割合は、さまざまな事情によって修正されます。
たとえば、歩行者が急に飛び出してきた場合には、自転車が事故を避けにくくなるので、
歩行者の過失割合が+5%となります。
事故現場が住宅街や商店街であった場合、歩行者の往来も多く、自転車に課される注意義務が上がるので、
歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が児童や高齢者であった場合には、適切に事故を避ける行動をとることが困難になるので、
歩行者の過失割合が-5%となります。
歩行者が幼児や障害者であった場合、歩行者が事故を避けることがさらに困難になるため、
歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車が片手運転やスマホを見ながらのながら運転をしていたなど、著しい過失があった場合には、
歩行者の過失割合が-5%となります。
自転車が酒酔い運転をしていたなど重過失があった場合には、
歩行者の過失割合が-10%となります。
自転車が先を歩いている歩行者に追突した場合や、容易に事故を避けることができたのに、避けなかった場合にも、自転車に著しい過失や重過失が認められます。